2009/2/22

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art drops インタビュー 2008 vol.5  テーマ:「心が変容する」金子きよ子

半田真規さん/アーティスト ―前編―

1handa『白浜青松原発瓢箪』

真っ只中にあって、真っ只中を体現したい 

半田真規さん(29)は、近年活躍が目立つコンテンポラリー・アーティストだ。その作品は、風景を再現、展開することにより成立するという。半田さんの手によって展開され、変容していく風景は、見るものに一体どのような影響を及ぼすというのだろうか。お話をうかがった。

 

 

■ 美術は展開に必要なメディウム(※)

半田真規さんは、1979年神奈川県に生まれる。
漠然と美術を意識し始めたのは17歳の頃。 
「昔から身の回りの環境に対しての意識(さわり)が強かったのです。眩しいとか、風が強いとか、大きいとか、それについて考えたりイメージすること好きだったのです。そして、時々その中にある不安定な部分が気になっていました。この世界の中、考えれば自分の存在すら不安定で、何を考えればいいかわからない時に、それを確かめる手段として、美術が有効なんじゃないかと感じ始めたのです」。

似たタイプの友人が美大を目指していることを知り、それがきっかけとなって、美大に入学した。

※ 媒剤:(ばいざい)は、絵具やインクの色素を基底材に押し広げる成分である、展色材( てんしょくざい)。『出所: Wikipedia』

 

■ 転機

転機が訪れたのは19歳の時。
「父親がインド人の友人の結婚式に招待され、代わりに僕が出席することになったのです。結婚式が終わって、せっかくここまで来たということもあり、そのまま数ヶ月インドに滞在しました」。

そこで見た事や出会った人から、その後の考えに大きな影響を受けた。
「別にインドだったからというのではなく、多分あの場所、あの時にあったことが総合的に作用しているような気がするのです。 
何か大陸感から来る根底とか、そこにあった生気、物理的にも感情的にも三次元に花開いているような、そういう情景を通して、何か分かったような気がしました。実感したというか、大きなボリュームと時間軸が見て取れたとか言い方は色々とあると思いますが」。

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慎重に言葉を選びながら半田さんは続ける。
「なかなかうまく言えませんが、物事の輪郭は、意識によって、コントロールによって、いくらでも変えることができるということです。二次元としての処理も、三次元としての処理も、同じ風景を見ているはずなのに。そういう作用、見方こそが、まさに実感として感じられる。その感覚の中で、人間の持つ感情、例えば、『興ざめる』とか、『飽きてしまう』という一種ネガティブなことさえも、三次元にすることができる、またそれこそが生き様としてふさわしい、そういうことを感じたのです」。      

半田さんはさらに続けてこう語る。
「その経験をきっかけにして、成立する世界の中で、自分はどう働いて行くことが良いのだろうか、ということを考え始めたのかもしれません。帰国後は、しばらく頭の整理が付かなかったですが・・『あれはなんだったのだろう』とか、『とにかく動かなきゃ』という感じで、動き回っていました」。

その経験を、今振り返って、どう捉えているのか聞いてみた。
「インド滞在によって、世との関わり方や美術の効果について知りました。物事をよく見ると、不安定で生生しいものを見ることが出来ます。僕は、真っ只中という一種コントロールの効かない感覚からそれを見ようとしました。どうにもできないような生理的な力に世界を見たような気がしたのです。体感的にもまいってしまうようなその状態、倦怠感、どっと汗が出て、それまで毛嫌いしていたものに対しても生気や色気に似た魅力を感じるようになってきました。物事に任せ、流れ、風景を見る、ユニセックスな感じに近いです。興ざめた状態に、臨界をもたらすようなエネルギーを感じたのです。その方法論を美術というメディアに考えたいというのがインドでの転機でした」。

そして、それらの経験をこう結ぶ。
「夏の夜によく乗る(※)その感覚を体現したいと思いました。奥まっていて、とても美しい風景、感情のボリューム。とても不安定でその中に吸い込まれてしまうそのもの。たぶん何か一つを過度に信じるという方法もありましたが、僕は展開というものを見たのです。展開は、定着していく感覚を外すことであり、タグを外していくことです。自分以外の感覚に寄り添うこと。それが美術になっていくと考えたのです」。

その後、半田さんは目の前に立ち上がってくる『風景』を一つの媒介として、作品を展開していくことになる。

※夏の夜という支持体に乗るという意味

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『ウォーターフォールピクニック』奥多摩
『ブランコはブランコでなく』越後妻有 重地
『感覚サーフィン』灯台 茅ヶ崎

 

>>半田真規さんインタビュー の後編はこちら

 

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